記憶と記録

見えたことは事実ではなく自分というフィルタを通した記憶である。写真とカメラ関係のブログです。




写真で大切な点と小説でのそれ

  「小説のストラテジー」(佐藤亜紀)には、芸術としての小説は何をもって成立しているか、詳しく記されている。それは、一般の読書好きにとっては意外なことが多く含まれている。例えば、小説にとって物語は読者へのインパクトという点で全く重要ではない、記述こそが大切であるというのが佐藤亜紀の主張だ。

  「声に出して読みたい日本語」(齋藤孝)は、発話時の言葉のリズムや体が感じる振動、そういった身体性を味わって欲しいと書かれた本だ。この本も物語を問題にしておらず、表現、すなわち記述を味わうことを主としている。

 

  アナロジーとしてこれを写真に置き換えれば、写真の主題(被写体)が何かは大した問題ではないということになろう。例えば、ポートレートにおいて誰を写すかは問題ではない。近所の女の子を写してもいいし、アイドル芸能人を写しても同じということだ。大切なのは記述、すなわち主題からどのような背景を置き、トーンと明るさを導いていくかが大事ということになる。

 

 下の写真は、浜辺に転がる大きな枯木を写したものだ。この写真で枯木は主題である。しかし、写真を見る人の感情へのインパクトという点に関して、どんな枯木であるかは全く問題ではない。浜辺に転がる枯木という主題から導かれる記述ー 色を失い白黒になり、明るさを失い大部分が暗く、水平線上にかかる左右にハケではいたような雲がわずかに光、見る人に奥行きを感じさせるー が大切だ。

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小説のストラテジー (ちくま文庫)

小説のストラテジー (ちくま文庫)

 

 

 

文庫 声に出して読みたい日本語 1 (草思社文庫)

文庫 声に出して読みたい日本語 1 (草思社文庫)