写真のレタッチの難しさは、絵を描く難しさと同じだ。
絵を書くことを想像して欲しい。画面のどこに人物を配置して建物はどこに配置するのか、その建物は何色で、色鮮やかさはどれくらいで、明るさは何色なのか、すべてを描き手が決めなければいけない。ここの色や明るさを決めるキーワードは、絵の目的、最終イメージだ。悲しい絵を書く時は、全体の明るさは暗く、色も黒や茶色が多くなろう。楽しい絵を書く時は、明るい画面で、色は赤やピンクオレンジなどの暖色系で揃うことになる。
写真のレタッチも、まずイメージを決め、そのイメージに合わせて修正を行うことになる。イメージなく写真の色をいじっても、迷子になるだけだ。
写真のレタッチで触るパラメータは4つだけだ。
- 写真の色合い
- 写真の明るさ
- 写真の彩度
- 写真のコントラスト
写真の色合い
写真の色合いは、ホワイトバランスで調整する。調整の方向は、2軸。青 vs 黄色と、緑 vs マゼンタ。 青と黄色は補色だ。緑とマゼンタも補色。つまり、色相環の反対側にある色ということだ。二軸で張られた色空間の中で写真全体の色を決める。
人物が主題の写真なら、肌色を再現することが目的になる。朝の爽やかさを表す写真なら、青味を少し加える。温かみ、優しさ、そういったイメージで仕上げるなら、黄色みを加える。大事なのは、表現したいイメージをはっきりさせること。そして、イメージと色の関係を知ること。表現したいイメージが無いまま色をいじっても、迷子になるから注意だ。
下の写真は色合いを変えたもの。青色の強い方が爽やかな印象を与える。
写真の明るさ
写真の明るさは、明るいと楽しいイメージになり、暗いと悲しいイメージになる。
下は同じ写真の明るさを変えたもの。こことで伝えたいことは二つ。一つ目は、僅かな違いに敏感になること。女性の化粧と同じでやりすぎるとおかしなことになる。僅かな変化で印象は変わる。二つ目は、明るさに良い悪いはない。表現したい写真のイメージに合うか合わないか、それだけのこと。
写真の彩度
記憶が鮮やかに蘇ると言うが、彩度は記憶の明瞭さを左右する。彩度の高い写真は、それがついさっき写されたかのような印象を与えるし、彩度の低い写真はずっと昔に撮られた写真のような印象を与える。
下の写真は彩度を変えた同じ写真。ずっと前に行った夏の旅行というイメージを表現したいのなら左だし、SNSで”今、海に来ています”とライブ感を表現したいなら右の写真が適している。
写真のコントラスト
コントラストが高いほど、印象の強い写真になる。印象の強い写真は目立つけれども見ていて疲れる。彩度と同じで、コントラストの低い写真は遠い昔に撮ったものに感じるし、コントラストの高い写真はついさっき撮った写真のように感じる。
下の写真はコントラスを変えたもの。右のコントラストの高い写真の方が強い印象を感じる。
まとめ
写真のレタッチは、まず写真で表現したいイメージを決めることから始める。イメージの無いままレタッチを始めると迷子になる。
レタッチで変えるパラメータは4つだけだ。
- 写真の色合い
- 写真の明るさ
- 写真の彩度
- 写真のコントラスト
それぞれのパラメータによって、写真のイメージが変化する。自分の表現したいイメージに合わせて、これらを調整する。
例えば、Instagramに投稿される写真は、明るめ彩度高めコントラスト強めのキラキラした写真が多い。これによって、明るいポジティブな印象で、たった今撮った写真であるかのようなイメージを表現している。
レタッチする際の注意点はたったの二つ。一つ目は、レタッチに正解はないこと意識する。正解のない作業をするのは実はつらい。自分の感性や好みだけが頼り。二つ目は、女性の化粧と同じでやり過ぎないこと。僅かな調整で写真の印象はグッと変わる。
ところで、そもそも、写真を撮り調整するときのイメージを固める作業をどんな風にすればよいのかについて、ここでは述べていない。これについては、別エントリが参考になると思う。