記憶と記録

見えたことは事実ではなく自分というフィルタを通した記憶であり、さらに記憶は記録で上書きされる。写真とカメラ関係のブログです。

誤解の多い三分割構図

絵を見る技術 名画の構造を読み解く

絵を見る技術 名画の構造を読み解く

 

 最近夢中に読んでいる本。絵画の造形分析の手法について詳しく書いています。造形分析とは、構図がどうなっているかを分析して、絵のバランスが取れている理由や、視線誘導のテクニックを明らかにするもの。

 

 今日はこの中から3分割構図について思うところを書きます。

 

3分割構図に対する誤解 

 3分割構図(被写体を画面を3等分した場所に置く)は、写真の撮り方の真っ先に挙げられるものです。実際、キーワード「写真 構図 コツ」くらいでネット検索すると上位に出てきます。例えば、【【キヤノン公式】素人っぽい写真を卒業しよう!カメラがもっと楽しくなる「構図」と「アングル」|カメラ初心者教室】にも3分割構図のことが書かれています。

まずご紹介するのが三分割構図と呼ばれる構図です。こちらはその文字の通り、まずはフレームを縦横に三分割します。するとちょうど「井」のような形になるので、その線上や、線が交わる点に被写体を配置すると、全体のバランスが取れるようになります。

 私も一時は3分割構図ばかりで写真を撮っていました。でも、これってバランスが取れているのか?と疑問に思い始めました。

 例えば、下の写真は船を3分割構図で撮ったものですが、みなさんは、これをバランスが取れてると思いますでしょうか?私には、右側が寂しい左側に偏ったアンバランスな構図に思えます。*1

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3分割構図の例(【キヤノン公式】素人っぽい写真を卒業しよう! より)


  つまり、三分割構図と葉、3分割した点に被写体を置けばそれだけでOKというものではありません。

 

名画における3分割構図

  例えば、葛飾北斎の下の絵は3分割構図で描かれています。

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葛飾北斎の「神奈川沖浪裏」、https://www.actzero.jp/developer/report-3973.html より

 

 ただし、3分割点に描かれているのは大波だけでなくその下の小波、そして富士山も3分割点に置かれていることが重要です。つまり、主題となるものを一つだけ三分割点に置けばよい、というわけではなく、副題となるものも三分割点に置くのが、本当の三分割構図です。

 さらに、この絵では右端にもうひとつ波を描くことで左右のバランスを取っています(試しに右端の波を手で隠すとバランスが悪くなるのが分かります)。

 

まとめ

 3分割構図は、写真の勉強を始めると必ず紹介される手法ですが、誤解されています。主題を三分割点に配置するだけでOKと紹介されていますが、それだけではバランスはとれません。主題だけでなく副題も三分割点に配置するのが三分割構図。さらに、左右のバランスを取るために小物を配置する場合もあります。

 今回は「絵を見る技術」から3分割構図に関する記事を書きました。この本には、三分割構図以外のテクニックも詳しく書かれていますので、咀嚼して記事を書きたい。

*1:例に挙げたページ(【キヤノン公式】素人っぽい写真を卒業しよう!)の趣旨は、素人は日の丸構図ばかりで撮りがちなのでそれ以外も試してみようということで、分かりやすい写真を例に挙げたのだと思います。