記憶と記録

見えたことは事実ではなく自分というフィルタを通した記憶であり、さらに記憶は記録で上書きされる。写真とカメラ関係のブログです。

デジタル写真の色を極める!「写真の学校」:トーンカーブについて豊富な説明をしている本

  『デジタル写真の色を極める!「写真の学校」』は、トーンカーブの理論本です。

 

 写真の本には2種類あって、レシピ本と理論本です。レシピ本というのは、インスタ映えする写真を撮るには、理屈はともかく(派手な色の食品を斜光で撮りましょうなど)とにかくこう撮りましょうと構図やカメラ設定を書いある本です。一方理論本は、逆光で撮ると被写体の輪郭が良く写る、順光で撮ると被写体の質感が良く写るが立体感は出ない、といった原理原則を書いています。

 レシピ本は、簡単に綺麗な写真が撮れるので楽ですが、応用が効かないしオリジナリティも出せません。一方、原則本は、目の前のシーンに対してどう撮るかは自分の判断を求められるので実践するのは難しい。どちらが優れているというものではなく、どちらも必要なのだと思っています。

 最近、「デジタル写真の色を極める」を読みました。これは典型的な原則本。露出と彩度をこう設定すれば色はマットになるし、別の設定にすればヌケの良い色になる、といった理屈を書いています(その代わりにどういったときにマットな色を使うと良いかは、読者の判断)。

 この中で詳しかったのはトーンカーブについての話。面白かったのでメモを残しておきます。

デジタル写真の色を極める! 「写真の学校」

デジタル写真の色を極める! 「写真の学校」

 

 

トーンカーブは万能

  トーンカーブはかなり万能です。明るさの調整や、色の調整も自由自在です。例えば、フィルム調に仕上げるプリセットを見ると、随分とトーンカーブをいじっています。

 ただし、その調整の仕方は画像毎に異なるため、本やネットでは説明しづらく、単純なS字カーブ程度のことしか載っていません。

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フィルム調にするためのトーンカーブ

”階調が豊か”とはどういう意味?

 写真雑誌などでよく「暗部の階調が豊か」などの表現を目にします。ところで、階調が豊かってどういう意味でしょう?

 「暗部の階調が豊か」とは、写真の暗い所の明度情報がたくさんあるという意味で、話を簡単にするためモノクロ写真で考えると、写真の暗い部分が明るさ0~10までの写真より、0~50までのものの方が階調が豊かです(数字が小さいほど暗い)。

 ところで、デジタル写真(JPEG)では写真の明るさは256段階(0~255)でしか表現できません。ここ重要です。写真の暗い部分に0~50の明度を使うと、残りの明るい部分には51~255の明度しか残りません。つまり、写真は一枚の中で256段階の明度表現を取り合っているのです。例えば、暗部の階調を豊かにすると明部の階調が貧弱になります。

 つまりカメラマンは、限られた256段階の階調をどこに多く割り当てるかの判断をする必要があります。

 

トーンカーブの使い方

 

 トーンカーブで階調をコントロールするには、階調を豊かにしたい部分でカーブを縦にし(起こして)いけば良い。これだけです。ただし、どこかを縦にすると別の部分が横になり階調に乏しくなります。どこに階調を割り当てるのかは、元画像を見ながらじっくり考える必要があります。

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補正したトーンカーブ

 例えば、上の例では、明るい部分(赤い部分)はカーブが立っており、その代わり暗い部分(青い部分)は寝ています。これは、明るい部分の階調が豊かになり、暗い部分の階調が貧しくなっているということです。

 この考え方で、自分が階調を与えたい部分の明るさに対応するトーンカーブを縦にし、そうでない部分を横にしていきます。

 

 ま、階調が豊かであれば正しいかというと、そういう訳でもなく、最近はわざとダイナミックレンジを狭くして階調を貧弱にしたトーンカーブを使っている写真も見かけます。下のトーンカーブでは明るい部分(赤色)と暗い部分(青色)を調整して全体の階調を貧弱にしています。つまり、明るさの表現が256段階(0~255)あったものを、もっと狭く(例えば、200段階(30~229)に)しています。さらに、明るい部分も暗い部分もトーンカーブは寝ていますので、潰れやすく(明部階調・暗部階調ともに貧弱に)しています。フィルム風の写真に加工するときによく使われるトーンカーブです。

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全体の階調を貧しくしたトーンカーブ

 

  このトーンカーブを使って調整した画像の例が下です。明るさの中間部分だけで絵作りすることになるので、見せたい部分の明るさがここに来るよう露出補正でしっかり調整しておくことが大切です。

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フィルム風の加工

まとめ

 トーンカーブのことをしっかり解説した本を読みました。この本を読むと、階調が豊かとはどういうことかよくわかります。

 デジタル写真の明るさは256段階でしか表現できないので、どこかに階調を割り当てると、別のところの階調が犠牲になります。見せたい被写体の明るさを、階調豊かな部分に合わせることが大事です。