「イノベーションのジレンマ」という経営学で有名な本があります。メーカーが製品を改良して性能を上げているうちに製品ターゲットがマスユーザーから数の少ない高機能ユーザに移っていき、ますユーザを代替品に奪われて、やがて会社が行き詰まるというパターンを明らかにした本です。
パソコンが性能を上げているうちに、普通のユーザはそんな高性能なパソコンを必要とはせず、ゲームユーザだけが性能にこだわるようになっていたというのが、典型例です。そうしているうちにパソコンを使う人は減り、スマートフォンがマスユーザーを獲得していますよね。
最近ニコンがフルサイズミラーレスカメラを発表しました。価格は40万円。次いでキヤノンもフルサイズミラーレスカメラを発表しましたし、今度パナソニックも発表するのではと噂されています。
このようにカメラメーカーが高性能で高価格のカメラに戦略をシフトしているように思えます。実際、高性能カメラは売れるし、メーカーにとっては利益率もよく儲かります。しかし、これまでのマスユーザはスマートフォンを使っており、カメラメーカーはますユーザを諦めたように思えます。
歴史が証明しているのは、今後スマートフォンのカメラが進化して、光学的でなくてもイメージング処理でボケを表現したり、高感度撮影のノイズが減ったりと、性能が上がってくるはずです。そうして段々とカメラユーザをスマートフォンにカメラメーカーは奪われていくでしょう。その度にカメラメーカはより高機能ユーザを狙って、さらに高性能で高価格なカメラを開発していくことになり、徐々にユーザ数を減らしていくことになるでしょう。
リコーが360度カメラThetaで新しいユーザを獲得しようとしています。イノベーションのジレンマを避けるには、これまでの競争軸(高画質)を捨てて新しい競争軸を探すしかありません。カメラ事業規模の小さなパナソニックには、新しい競争軸を探してもらいたいと思ったりします。高画質を求める市場は小さくなり始めており、消耗戦が始まっていますから。
RICOH THETA V 360度カメラ 全天球 910725 メタリックグレー
- 出版社/メーカー: リコー
- 発売日: 2017/09/15
- メディア: エレクトロニクス
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イノベーションのジレンマ (―技術革新が巨大企業を滅ぼすとき (Harvard business school press))
- 作者: クレイトン・クリステンセン,玉田俊平太,伊豆原弓
- 出版社/メーカー: 株式会社翔泳社
- 発売日: 2011/12/20
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