道がつづら折りになって、いよいよ天城峠に近づいたと思う頃、雨脚(あまあし)が杉の密林を白く染めながら、すさまじい早さで麓(ふもと)から私を追って来た。
私は二十歳、高等学校の制帽をかぶり、紺飛白(こんがすり)の着物に袴(はかま)をはき、学生カバンを肩にかけていた。
(「伊豆の踊子」(川端康成)より)
隠しきれない移り香が
いつしかあなたにしみついた
誰かに盗られるくらいなら
あなたを殺していいですか
寝乱れて隠れ宿
(「天城越え」(石川さゆり)より)
何かと有名な天城山、そこを源流とするのが狩野川。大きく蛇行しているため氾濫の起こりやすい川でもある。
狩野川を眺めていると、源流の天城山、そして天城越えに思いを馳せてしまう。「伊豆の踊子」の未熟で切ない恋に比べて、「天城越え」の大人の欲深い愛の対比が、僕を混乱させる。
あなたは、どちらを選ぶ?
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