写真のレタッチは、絵を描くことに似ている。単に明るさを変えるだけでなく、部分的に色を変えたり、線をシャープにしたり、質感を滑らかにしたりと様々なことができる。その色々できる自由度がレタッチを難しくする。どんな修正もでき、突き詰めれば本人の美的センスが仕上がりを決める。
レタッチを必要悪のように言う人がいる。現場の撮影での失敗の修正だという人がいる。私はそうは思わない。映画やドラマのようにストロボを焚いたり照明を使って光をコントロールしたり、セットを組んで背景を作り、衣装やメイクで被写体を作り上げるのであれば撮影だけで完結する。撮影時に光や被写体などすべてをコントロールしているのだから。撮影時にすべてをコントロールしてないのであれば撮影後にレタッチをするのも当然だ。また、写真の色やコントラストはカメラメーカがしている。撮った写真の絵作りをカメラメーカにまかせっきりというのもおかしい。自分なりの絵作りがあり、それを実現するためのレタッチは当然すべきだ。
レタッチに関する書籍は分かりづらいものが多い。LightroomやPhotoshopのようなソフトの使い方を詳しく書いたものが殆どで、どのような手順でレタッチをすればよいかやレタッチをする際のコツについて書かれたものは少ない。
この「超銀塩的写真レタッチ」は、レタッチの手順やコツについて本当に大事なことだけを書いている。
レタッチに際しては、まずは”ストレートデータ”を作る。”ストレートデータ”とは画像の輝度がダイナミックレンジいっぱいに広がるようにしたもの。Lightroomだと黒レベルと白レベルを使って補正する。”ストレートデータ”を見ながらレタッチの方向性を決めていく。これにより補正の幅が広がる。
次に、写真の一部分だけを暗くしたり明るくしたりして主題をはっきりさせる。Lightroomだと円形フィルタや補正ブラシを使ってこの作業を行う。
さらに色の調整を行うというように段階を追ってレタッチをしていく。
この他にノイズを写真に乗せることで明瞭度を上げるテクニックや女性の肌の綺麗な補正の方法などレタッチのコツが記されている。
この本を参考にレタッチした写真が以下。”ストレートデータ”をまず作ることで、レタッチの方針を決めやすかった。