新宿の空をふと見上げたら、高村光太郎の「あどけない話」が浮かんだ。智恵子抄が出版されたのが1947年、70年以上前のことだ。70年経っても人の心に残っている、なんて強い詩なんだろう。
智恵子は東京に空が無いという
ほんとの空が見たいという
私は驚いて空を見る
桜若葉の間に在るのは
切っても切れない
むかしなじみのきれいな空だ
どんよりけむる地平のぼかしは
うすもも色の朝のしめりだ
智恵子は遠くを見ながら言う
阿多多羅山の山の上に
毎日出ている青い空が
智恵子のほんとの空だという
あどけない空の話である。
(高村光太郎「あどけない話」、詩集『智恵子抄』より)
RICOH GR Digital3を持って新宿を散歩していたとき、ふとGR3を真上に向けたらどうなるだろうか?と思い立ち、撮ったのが上の写真です。新宿はビルが高いため、焦点距離28mmで空を撮るといくつものビルが写りこみます。
この写真を撮ってから新宿駅に向かう間、なんども「あどけない話」を反芻していました。
使用機材
RICOH GR Digital3