いい写真って何でしょうね?インスタグラムの写真に「いいね」をしても、気の利いたコメントを書くことはなかなかできません。写真展を見に行っても、何と評してよいのやら、ということが良くあります。
今日は写真を見ることについて、書いています。考えるきっかけになったのは、小説の読み方を書いた本「小説のストラテジ」です。この本に書いてあることは、
- 物語は鑑賞ポイントではない。
- 読者の積極的な働きかけがなければ、小説は十分に味わえない。
これを参考に考えると、写真の見方は、
- 写真に何が写っているかはポイントではない。
- 見るものが積極的に働きかけなければ、写真は十分に味わえない。
ということになるでしょう。
写真に写っているものは、海だったり、山だったり、人だったり、ありきたりなものが写っています。新たに発見された新種の昆虫などが写っていれば、写っているものにポイントはあるでしょうが、普通はありきたりなものです。
では、写真を見るときに積極的に働きかけるとはどういうことでしょうか?
今のところ、「名詞で写真を見ない」ということだと考えています。
具体的に行きましょう。下の写真は、keisukeさんのflickrに投稿されている写真で、私はこれが好きです。
((はてなID:ケイスケ (id:keisuke9498))さんの写真*1
https://www.flickr.com/photos/keisuke9498/40544419305/in/dateposted/)
これを名詞で見れば、「バス」でしょう。ここで終わりにせず、「暗い」バスなど形容詞を付けていきます。さらにじっくり見ると「傾いた」暗いバスとも言えそうです。バス以外を見てみると、左側に「東急イン」の看板が見えます。その手前に「明るい」建物が見えます。
「明るい」という形容詞に気づけば、右側は「暗い」ことが分かります。「暗い」バスが進む先は「暗い」のです。その暗い先には「都会的な」ビルが建っています。そしてそのビルは「傾いた」バスと違って「真直ぐな」ビルであることにも気づきます。
このように形容詞や副詞を使って様々な視点で見ていきます。このバスが「回送」であることにも気づきます。
写真の端から端まで見ていくうちに、私がこの写真を好きな理由が分かってきます。この写真からは、仕事を終えたバスが少し急ぎ気味に家に帰っていくというある種ホッとした印象を受ける点が、好きなのです。
写真を「名詞」で見るとなぜいけないかと言うと、頭の中に記憶されている典型的なものと一緒くたになるためだと思います。
下の写真は、私の撮った写真です。「藤の花」と一言で要約できます。すると、頭の中の辞書が検索されて、記憶している「藤の花」がイメージされて、これで終わりです。他の「藤の花」の写真との違いを引き出すことができなくなります。
これを「紫色」と思って視ると、他の色が気になってきませんか?あるいは「明るい」と思って視ると、「カラフル」と思って視る、いろんな見方を試すと、受ける印象が変わるかもしれません。私は木の幹の「黒い色」が気に入っています。
まとめ
写真を見るのはなかなか難しいものです。自分はこの写真のどこが好きかを探しながら、名詞だけでなく形容詞や副詞を使って写真を見るとうまく味わえるようで、好きなインスタグラム写真に、ついコメントを書いてしまいます。
*1:ご本人より許可を頂き貼っています。