記憶と記録

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レンズのF値を徹底解説、焦点距離との関係は?

 レンズのF値は、どうして焦点距離に関係するのかというお話です。

 

 一眼カメラを使っているとレンズのF値を強く意識します。F値とは、レンズの 焦点距離を有効口径で割った値で、F値の低いほど明るいレンズなどと言われます。

 ここで、有効口径が大きいほどレンズが明るいのは直感的に分かりますよね?では、焦点距離がF値に関係するのは何故でしょう?この理由を述べた記述がネットに見つかりません。そこで、焦点距離とF値の関係を解説します。

 

そもそもF値とは?

 カメラを撮像素子・シャッター・レンズに分けて考えたとき、写真の明るさに関するパラメータは次のようになります。

  • 撮像素子 → ISO感度
  • シャッター→ シャッター速度
  • レンズ  → F値

 

 ISO感度やシャッター速度が同じであれば、F値が小さいほど明るい写真になります(F値はボケ量にも関係しますが、それに関しては別エントリ【写真のボケ表現:F値が小さいほどよくボケる、その理由を解説 - 記憶と記録】を参照してください)。

 

 ISO感度を200から400に上げると写真の明るさが2倍になります。ISO感度200から800に上げると明るさは4倍です。つまりISO感度をN倍すると写真の明るさもN倍になります。シャッター速度を1/100から1/50にすると写真の明るさが2倍になります。つまりシャッター速度をN倍にすると写真の明るさもN倍になります。

 ところがF値は少し複雑です。F値を2から4にすると写真の明るさは1/4になります。F値を2から8にすると明るさは1/16になります。つまりF値をN倍にすると写真の明るさは\frac{1}{N^2}になります。

 

直感的な説明

  F値はレンズの焦点距離を有効口径で割った値です。下の図では左側から入った光がレンズを通って撮像素子に集まる様子を書いています。レンズと撮像素子の距離が焦点距離、レンズの大きさが有効口径です。ちなみに、開放F値とは、そのレンズが一番小さくできるF値のことです。

 レンズが大きい(有効口径が大きい)ほど明るい写真になるのは直感的に分かると思います。焦点距離が短いほど明るい写真になるのは何故でしょう?

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  カメラで写真を撮るとき、被写体からの光がカメラに届いてそれを撮像素子が捕まえて画像にしています。写真に写っている範囲が狭いほどカメラに届く光は少なくなります。

  例えば、下の左の写真は焦点距離56mmで撮ったものです。カメラに届いた光は写真に写っている被写体(空、ビル、道路等)から届いたものです。この写真を2倍にズームすると面積で1/4の領域がクローズアップされます(右)。このとき画面に映る被写体が減るのでカメラの撮像素子に届く光も減ります。空やビルから届いていた光がカメラの撮像素子に届いていません。この場合光の量が1/4になったことになります(画面内の光の強さが一様だとして)。

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広角の写真(左)と望遠の写真(右)



 詳細な説明

 ここからは数式を使って説明していきます。

 写真に写る範囲を画角は撮像素子の大きさと焦点距離で決まります。撮像素子の端点Bとレンズの中心点Pを通る線を伸ばした先が、写真に写る範囲の端になります。

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 三角形BQPと三角形OCPは相似であるため、g/s=f/b。つまり s=bg/f。写真に写る範囲を一辺sの正方形だとすると、光がやってくる範囲はs^2=\frac{1}{f^2}(bg)^2となり、撮像素子に入る光の量は 1/f^2に比例することが分かります。

 また、この光の量は、レンズの面積にも比例するため、 R^2にも比例することが分かります。

 つまり、撮像素子に入る光の量は R^2/f^2に比例することになります。

 F値は焦点距離を有効口径で割った値ですから、撮像素子に入る光の量R^2/f^2の平方根の逆数となることが分かります。

 

まとめ

 F値が小さいほど明るいレンズと言われます。そのF値は焦点距離を有効口径で割った値なのですが、焦点距離が何故F値に関係するのか記したネット記事を見かけません。そこでその理由を記しました。

 カメラの撮像素子に届く光は被写体から発っせられたもののため、ズームイン(焦点距離を長く)して写る範囲を狭めればその光の量は少なくなり、ズームアウト(焦点距離を短く)して写る範囲が広がれば光の量は多くなります。F値は撮像素子に届く光の量を表すため、焦点距離にも関係します。

 

 オートで撮影すればF値やシャッター速度、ISO感度をカメラが決めてくれますので、F値の意味を知る必要はあまりありません。ただ、F値が2倍になると光の量が1/4になることを知っているとレンズ選びに役に立ちます。例えば、F2.8とF1.4のレンズでは光の量が4倍違うため、ISO感度を1/4にできます。夜の撮影を考えると、F2.8のレンズではISO感度25600で撮影しなければいけない状況でも、F1.4のレンズを使えばISO感度を6400まで落とせることが分かります。ISO感度6400は大抵のカメラでは綺麗に写りますので、明るい単焦点を買うと幸せになれそうです。

 

 

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お題「カメラ」