概要
今のカメラは、レンズの性能が低くこれ以上画素数を上げても、解像度の高い写真は撮れないというお話です。良いレンズが必要です。
はじめに
カメラの画素数がどんどん向上していますが、意味あるのでしょうか?よく高画素化により高感度画質が悪くなるという話がされています。ここではそういう話ではなく、レンズの性能と撮像素子の画素数とを比べ、どちらがボトルネックなのかを考えてみます。レンズの性能(分解能)以上に撮像素子の画素数を多くしても意味はありませんから。
レンズの分解能
レンズの解像度はどれくらいでしょうか?
レンズの性能を下げる要因は二つ、収差と小絞りボケ(回折現象)です。レンズの設計技術の向上により収差は減ってきており、最近のレンズの性能が上がっているのはこのためです。一方で、小絞りボケは、光が波の性質を持つ物理現象によるもので、これを防ぐことはできません。
さて、理想的に収差の無いレンズを考えましょう。レンズの解像度は小絞りボケで決まることになり、これはF値で決まってきます。wikipediaを参照すると、分解能は次のようになります。
レーリー限界での解像力限界(e線)
F5.6:268本/mm
F8.0: 188本/mm
F11 : 136本/mm
F16 : 94本/mm
F22 : 68本/mm
一方、収差を考慮した現実的な性能を考えてみましょう。
GANREFにソニー Sonnar T* FE 55mm F1.8 ZAの性能テストがありました(カメラはα7)。これによると、撮像素子短辺(24mm)で3183本解像するようです。つまり
- 133本/mm (=3183本/24mm)
これらの分解能を線の間隔に直してみます。例えば、F5.6の場合の268本/mmは、線間隔で言うと 3.7μm(=1/268mm)となります。
条件 | 分解能 | 線間隔(μm) |
---|---|---|
F5.6 | 268本/mm | 3.7 |
F8.0 | 188本/mm | 5.3 |
F11 | 136本/mm | 7.4 |
F16 | 94本/mm | 10.6 |
F22 | 68本/mm | 14.7 |
Sonnar T * EF55m F1.8 ZA | 133本/mm | 7.5 |
上の表から、レンズの限界性能は線間隔3.7μm(F5.6時)、現実的にはその倍の7.5μm(Sonnar T* EF55m F1.8 ZA)と言えます。
撮像素子の分解能
次に撮像素子の分解能を考えます。現在最も画素数の多いカメラを調べると次の通り。
- フルサイズ:5300万画素(CANON EOS 5Ds)
- APS-C:2580万画素(CANON EOS 80D)
- マイクロフォーサーズ:2170万画素(パナソニック LUMIX DCG9)
これらの画素サイズ(一辺の長さ)を計算してみます(撮像素子面積÷画素数の平方根)。
撮像素子 | 画素数 | 画素一辺の長さ(μm) |
フルサイズ(素子サイズ 36mm×24mm)4.0μm | 5300万 | 4.0μm |
APS-C(素子サイズ23.6mm×15.8mm) | 2580万 | 3.8μm |
マイクロフォーサーズ(素子サイズ17.3mm×13mm) | 2170万 | 3.2μm |
レンズの分解能と撮像素子の比較
Sonnar T * EF55m F1.8 ZAの線間隔は7.5μmです。一方で撮像素子の画素の一辺の長さは4μmですから、レンズによって結像される線間隔は2画素分に相当します。こう考えると、これ以上撮像素子を高画素化しても写真の解像度は上がらないと言えます。もっと高性能なレンズが必要です。
一方、収差の無い理想レンズを考えると、F5.6で268本/mmまで解像しこれは線間隔で3.7μmに相当します。これは現在の撮像素子の画素間隔に等しい。もし、今の半分の2μmの大きさの画素が作れれば解像度が上がりそうです。画素数にして4倍くらいの性能向上余地があります。
まとめ
最近の2000万画素越えのカメラは、レンズの性能と比べると必要十分な画素数を持っていると言えそうです。これ以上画素数が少ないとレンズの性能を生かしきれない場合があり得ます。
一方、高画素化による解像度向上はそろそろ限界で、これ以上の高画素化をしてもレンズの性能不足が足を引っ張って写真の解像度は上がらないでしょう。さらなるレンズの性能向上が必要です。
しかしながら、理想レンズの性能は小絞りボケにより上限が決まります(物理限界)。もし、理想レンズを作れたとしても、今の4倍の画素数が限界となります。
おまけ:現実的な方法
ネット等ではあまり語られていませんが、簡単に高解像度の写真を撮る方法があります。
レンズの解像度は、絞りの値によって大きく変わります。実は、最新のレンズを新たに買うよりも、絞り値を買えた方が解像度はグッと高くなります。上手な人の写真がシャープなのは、レンズを使いこなしているから。レンズの性能を最大限引き出すためには、最も美味しいパラメータを知ることが大切です。
美味しいパラメータの調べ方を別記事に書いておきます。これだけすごくシャープな写真が撮れるようになります。