記憶と記録

見えたことは事実ではなく自分というフィルタを通した記憶であり、さらに記憶は記録で上書きされる。写真とカメラ関係のブログです。

写真集『ISSEI MIYAKE』(Irving Penn)の感想:ミニマリストとは、一つ一つの質が高めることだ。

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はじめに

 アービング・ペンの写真集『ISSEI MIYAKE』を読みました。

 ペンの作品は、20世紀の写真芸術におけるミニマリズムを代表しています。被写体の輪郭や質感を研ぎ澄ました写真は、同時代のファッション、広告、アートを横断的につなげたと言われています。

 感想を記します。

 

アービング・ペン(Irving Penn)について

基本情報

 アービング・ペンは1917年6月16日、ニュージャージー州プレインフィールドに生まれ、2009年10月7日に逝去したアメリカの写真家です。1934年にフィラデルフィアの工芸美術学校(Industrial Art Museum School)で学び、アレクセイ・ブロドヴィッチに師事しました。その後、1943年からファッション誌「Vogue」で活動を開始し、以降50年以上にわたり同誌を代表するフォトグラファーとして活躍しました。

 

作風と技法

  • ミニマリズムを追求し、被写体を白または無地の背景で際立たせることで、質感やフォルムを純粋に浮かび上がらせました。
  • ポートレート、静物、ファッション、風景など多岐にわたるテーマを手がけつつ、一貫して「被写体そのものの価値」を引き出す表現を貫きました。
  • プラチナ・パラジウムプリントや染料転写プリントを駆使し、深い黒や階調豊かなトーン表現を実現。これにより、版画的な風合いと写真のリアリズムを同時に獲得しました。

 

代表的なシリーズと作品

  • パーソナルポートレート
    • リザ・フォンサグリーヴス=ペン(妻)をモデルにしたファッションポートレート群。
    • 1950年制作の「Rochas Mermaid Dress」はプラチナ・パラジウムプリントの極致と評されます。
  • 静物写真シリーズ
    • 「Flowers」では73種の花をスタジオ背景で、つぼみから枯死までのプロセスをミニマルに記録しました。1977年初版/1980年英語版再刊行。
    • 「Single Oriental Poppy, New York, 1968」は染料転写プリント(1987年制作)による色彩豊かな表現が特徴です。
  • 日用品・工業製品の記録
    • 「Cigarettes」シリーズでは、無造作に並べたタバコと灰皿を大判カメラで接写し、形式化された静物アートに昇華させました。

 

主な刊行写真集一覧

タイトル

出版社

1978

Inventive Paris Clothes, 1909–1939: A Photographic Essay

Viking Press

1980

Flowers

Harmony Books

1992

PASSAGE—a work record

リブロポート

1996

Irving Penn: Photographs

Gingko Press

1999

Still Life

Bulfinch Press

2001

アービング・ペン 三宅一生の仕事への視点

求龍堂

 

写真集『ISSEI MIYAKE』について

 この写真集は、1988年にパリの装飾美術館(Musée des Arts Décoratifs)での展覧会「ISSEY MIYAKE A UN」に合わせて刊行された作品集です。写真は1987年にニューヨークでアービング・ペンが撮影しました。その際、洋服は日本から三宅一生が彼の服をまとめてニューヨークに送り、服の選択や撮影に彼は立ち会わずペンに任せました。

 ペンが得意としたミニマル背景(全写真が白バック)と自然光で、洋服のテキスタイルやフォルムが際立っています。

 

感想

 全頁白バックという写真集はとても珍しいです。一方で、布のテクスチャがしっかり描写されており驚きます。この写真が40年前に撮られたと思うと、現代の機材の進歩はどんな意味があるのか疑いたくなります。

 また、三宅一生さんの言葉が散りばめられており、その中で次の言葉が好きです。

 

布には「性」がある。木目に逆らうことが出来ないように、「性」には逆らえない。時おり、目を閉じて布に教えてもらうことがある。

 

服は着ている人が内側から感じるものでなければならない

 

時計が好きでいくつも持っている。時計はその顔つきが面白い。

正確な時間など知る必要はないと思っている。

 

 この写真集の中で、一番好きな写真のURLを記しておきます。

Issey Miyake Photographed by Irving Penn | ARCHIVE.pdf | Issey Miyake: Photos by Irving Penn

 服が左に寄っていますが、身体はむしろ右に寄っていて、右足の膝の曲げが深い。上半身と下半身のそれぞれを見た際の重心位置が異なって見えますが、全体でみるとバランスが取れていて、かつ力強い。すごい。