記憶と記録

見えたことは事実ではなく自分というフィルタを通した記憶であり、さらに記憶は記録で上書きされる。写真とカメラ関係のブログです。

富士フィルムの色は綺麗なのか?

  富士フィルムのX-T2を手に入れて遊んでいます。軽量さが魅力で選んだカメラですが、調べていると「富士は色が綺麗」という言葉をネットでよくみつけます。

  「色が綺麗」ってどういうことなのでしょう?

 

 楽器の世界では、ウクレレはカマカが音が良いとか、ピアノはヤマハの音が良いとか言われたりします。これは分かります。どんな音が出るかは楽器次第で演奏者がコントロールできる範囲がとても狭い。

 

  一方でデジタルカメラに対して、「富士は色が綺麗」という表現がピンときません。デジタルなのでレタッチで色はどのようにでも変えることができます。ユーザーの好みを超えて富士の色が綺麗だと言うならば、まるで究極の色表現があり、その究極に富士フィルムが一番近いと言っていようです。

  でも、究極の色表現などあるはずもない。写真の暗部の階調ひとつを考えても、硬くすれば「黒を締める」(ポジティブな表現)、「暗部が潰れる」(ネガティブな表現)のふた通りあります。逆に柔らかくすると「滑らかなグラデーション」(ポジティブな表現)、「ねむい」(ネガティブな表現)とふた通りの表現があります。ポジティブ・ネガティブの両方の表現があるということは、硬くしても柔らかくしても見る人の好みでポジティブにもネガティブにも感じられるということでしょう。要するに好みの問題。

 

 昔から富士フィルムは色にこだわっており「記憶色と記録色」などと言っていました。これは、人が記憶する色は、実際の色とは異なるという意味。真っ赤な夕陽は、計測器で測ると人が思う以上には赤くない。では、カメラは、正確な色を記録すべきか、それとも人が感じる色を記録すべきかという選択を迫られる訳です。この選択を上手に行うのが富士フィルムのカメラだったのでしょう。

 

  写真がデジタルになり、今や誰もがスマートフォンで写真を撮り、写真を加工する時代になりました。みんなの好みに合う色表現をすることは最早無理でしょう。フィルム写真ライクなダイナミックレンジの狭い色の転んだ写真が好きという人がいたり、明度の高いエアリーな写真が好きという人、マットな色合いの写真が好きという人、様々な人がいます(好みの多様化)。

   デジタルになってどんな色合いの写真にでもできるとき大切になってくるのは、自分の好きな色合いは何なのか?をよくイメージすることでしょう。でも、これは結構大変なんですよね。

 

  富士フィルムのカメラには写真の色合いを調整する機能が豊富に備えられています。フィルムシミュレーション機能ではプリセットが揃っていますし、階調も明部・暗部に分けて設定できます。もちろん、彩度も設定できます。これらの調整を繰り返すことが、自分の好みの色合いをみつける手段にもなりそうです。