綺麗な写真の撮れるフルサイズカメラにも、欠点がある。値段が高いこと、重いこと、大きいこと。画質のためにはこれらを我慢するという人も多い。でも、これ以外にも欠点のあることは、意外に知られていない。実はパンフォーカスで撮るとき、画質はスマートフォンよりも悪い。
例えば、御殿場で富士山を背景に記念写真を撮る場合を考えよう。カメラマンの1メートル先に人物がいて、そのずっと先の約20kmに富士山がある。フルサイズで人物と富士山の両方にピントを合わせるのはかなり難しい(計算上は、焦点距離35mmのレンズでf 42まで絞る必要がある)。
フルサイズカメラは、ボケの効いた写真を撮り易い。でも逆に、ボケていない写真はとても撮りずらい。これは、センサーサイズによるもので、センサーサイズが大きければボケやすく、センサーサイズが小さければボケずらい。
フルサイズカメラでボケない写真を撮ろうとすると、レンズの絞りを絞ることになる。でも、絞るとその分ISO感度を上げる必要がある。
例えば、焦点距離28mmのレンズで1m先の被写体を撮ることを考えよう。パンフォーカスで撮るためには、f/27まで絞る必要がある。一方、同じ画角のコンパクトカメラ、例えばリコーGR Digital3*1ではf/1.4でパンフォーカスで撮れる*2。同じシャッター速度にするためには、ISO感度を次のように設定しなければならない。
- フルサイズカメラ:ISO 74,000
- GR Digital3: ISO 200
さすがにこれだけ差があると、スマートフォンやコンパクトカメラの方が良い画質になる。
まとめ
フルサイズカメラの画質がいつも良いとは限らない。場合によっては、スマートフォンよりも画質が悪くなる。
もちろん、ポートレートや風景撮影などは、フルサイズカメラが得意な撮影シーンで、スマートフォンよりも良い画質で撮れる。一方、ストリートスナップのように被写体と背景の両方にピントが来て欲しいシーンでは、思い切って絞る必要があり、その分ISO感度を上げることになり、画質が下がる。
フルサイズカメラは、ボケやすい分だけボケない写真が苦手。これはみんな知っていることだけど、計算してみると随分苦手なことが分かる。
補足
パンフォーカスにするための絞り値を求めるための計算方法は、別エントリを見て欲しい。